リリースされてから、もう30年になるのに、いまだに色あせない輝きを放つ2枚のアルバムがある。More Than Paradiseの作品だ。ラテンのエッセンスを思いきりちりばめて、夏と海のイメージをふんだんに取り入れ、おしゃれで洗練されている。最近のジャパニーズ0シティ・ポップ、リバイバルにおいても、傑作として評価は高いのだ。
2021年、モアパラは再びレコーディングを開始した。鈴木雄大、景家淳、A― miというオリジナルメンバーに、村瀬由衣も参加して、4人でのスタートだ。鈴木、景家、A‐ mi、村瀬はソロアーティストとして、またコンポーザーや、シンガーとして現役で活動を続けてきたプロフェッショナルたちである。
30年ぶりの新作にあたり「ラテンのイメージ、ブラジルとかボサノバとかサンバとかジャズとか。そういう自分たちの中にある引き出しから、今の僕らがどんな音楽ができるのかが楽しみだった(景家)」という。楽曲は、鈴木、景家、A-miの3人が中心となって担当し、アレンジには大御所、船山基紀、気鋭の安部潤、ベテラン山田秀俊も新メンバー村瀬由衣のために参加。トップミュージシャンたちが集結して、変化に富んだコンテンポラリーなサウンドを展開している。「これだけ最高峰のテクニックと、ハートのある人たちが集まると、どうしてもおしゃれにもなる(鈴木)」と、笑う。
さらに、モアパラといえば、夏。外出にも気を使うご時世だが、夏を感じれば、心と体が動き出す。「人には、はじけたくなる季節がある。そういう日寺に1聴いてほしい(A-mi)」。
A-miの歌はキュートでパワーをひめ、村瀬のボーカルは、おだやかだが大きなうねりで圧倒する。ラブソングの名手、鈴木のハートフルな歌声と、インパクト大の景家のトーンもいい。
「今回はぜひ、コーラスワークにも耳を傾けて(村瀬)」。全9曲中のいろんな場面で、4人の技巧をこらした綺麗なハーモニーが流れる。とくにアントニオ・カルロス・ジョビンの『Dindi』のカバーは必聴だ。
では、最後にあなたにとってのMore Than Paradiseは?
「音楽って、気持ちが上がるもの。不穏な時代だからこそ、みんなの心を音楽で、元気にできれば嬉しい。そこがモアパラの魅力、そのためにやっています。(鈴木)」
『Another Heaven』が、きっと、あなたのパラダイスになりますように。
文 高山まゆみ
2021.7.30
1. ただ逢いたくて
2. アクアマリン
3. 砂の上のLove Story
4. 愛と疵
5. Dindi (Cover)
6. トンネルの向こう
7. Vacation Song
8. After Party
9. しあわせの歌